Vol.320 黒字なのになぜ資金不足になるのか?

配信日:2019年6月25日

配信日:2019年6月25日

 

今日お伝えする内容は、以前にもお伝えしたことがあるもので、
読んだ覚えがあるという方もいらっしゃるかもしれませんが、
先日、ご相談にいらしたお客様との会話で、同じような話が出てきたので、
改めてお伝えしようと思い、取り扱う事にしました。

 

よく聞く話しであり、基本的でありながらも大事なことなので、
ぜひ改めて意識を高めていただきたいと思います。

 

中小企業に多くあるスタイルの一つ、社長が旦那さんで経理が奥さんという
会社をイメージしてください。

 

こういったケースの多くの場合、社長よりも奥さんの方が
会社の資金繰り実態を把握されています。

 

社長は、顧問税理士さんが作ってくれた試算表や決算書は見ますが、
預金通帳や現金出納帳は経理の奥さんに任せていて、お金の出入りについては
ほとんど把握していないからです。

 

このようなケースで本当によくある話をします。

 

顧問税理士が作ってくれた試算表や決算書を見ると自社は黒字で
節税しないと納税が大変だ。という指摘を受けています。

 

ところが、経理の奥さんからは、月末や給料支払い日になると
いつもお金がないお金がないと愚痴を聞かされ、社長はうんざりしています。

 

そこで、社長は奥さんに
「税理士から節税しろと言われるくらいうちは黒字なのに
なんで金がないんだ!おかしいだろ!」

 

そう言われ、経理の奥さんは、
「そんなこと言ったって、実際にお金が足りないのだから仕方ないでしょ!」

 

社長「お前の管理がおかしいからそうなるんだ。金がないはずないんだ!
うちは間違いなく黒字なんだぞ!」

 

こういったやり取りは、そこら中であるかもしれません。

 

これは、社長は損益計算書からの視点、奥さんは資金繰りからの視点で
話をしている為にすれ違いが起きてしまっているのですね。

 

いわゆる、「勘定合って銭足らず」の典型的なパターンです。

 

損益が黒字なら預金通帳の残高は増え続けるか。と言えば、
決してそんなことはありません。
(※事業モデルによっては、そういうケースもあります。)

 

特に銀行融資を受けている会社や資産性の生命保険に加入している
会社であれば、まず損益と資金繰りは合いません。

 

例えば、年間で1,000万円の利益が出ていても
年間の返済額が2,000万円だったらどうでしょう。

 

シンプルに単純計算しますと、
1,000万円の利益から2,000万円の返済をするので、
資金的には1,000万-2,000万=1,000万円不足します。

 

損益計算書には借入の返済額は出てこないので、黒字の1,000万円は、
借入返済前の数字です。
借入の返済2,000万円は、利益の1,000万円からしますので、黒字額以上の
返済であれば当然に資金が不足します。

 

一方で、この1,000万円の利益に対して税金がかかるとすれば、
税理士さんの立場であれば、このままでは多額の法人税が発生しますよ。
対策した方が良いですね。とアドバイスすることも多いでしょう。

 

しかし、資金繰り的に見れば、節税するどころか、まったく足りてません。
という事になるわけです。

 

このような話は、実に多くあります。
この流れで、1,000万円不足しているのに、さらに節税保険に加入して
ますます資金不足に拍車がかかると言った笑えない話もたくさんあります。

 

キャッシュフローの基本的な仕組みを知っていれば、ごく当たり前の話
なのですが、意外とこの部分が抜けていることが多くあります。

 

また、税理士の先生も立場上、税務に関するアドバイスが中心となり、
資金繰りの視点からアドバイスをする方が少ないことも一因かもしれません。

 

このようなことにならない為にも、損益計算書で黒字か赤字かに注目する
ばかりではなく、資金繰りをしっかり把握しながら経営されることを
強くお勧めします。

 

私の顧問先では、損益計算書よりも資金繰り表を中心に据えた
資金繰り重視の管理です。

 

ぜひ、取り組んでください!

 

それでは、次回もよろしくお願い致します。

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本記事は、赤沼慎太郎発行の無料メールマガジン『起業家・経営者のための「使える情報」マガジン』
から記事を一部抜粋したものです。
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