配信日:2016年10月19日
配信日:2016年10月19日
最近、顧問先の取引今回は、前回の内容を受け、借り手である中小企業としては
どのような対応をしていくべきか。について書いていこうと思います。
前回の内容をおさらいしてみますと、バブル崩壊後からこれまで日本の金融行政は、
不良債権処理が中心に置かれ、銀行の健全性を確保するために金融庁は銀行に対して
厳しい金融検査を行ってきました。
その影響で銀行はリスクを取った融資に消極的になり、決算書等の過去の業績からの
評価と担保や保証による保全をきっちり取った融資に偏ってしまいました。
本来注目すべき、借り手企業のビジネスモデルや将来性と言った部分を見ようとせず、
過去の業績、担保の有無等を重要視するようになってしまったのです。
これに反省した金融庁は、銀行に大きな影響を及ぼしてきた金融検査マニュアルに
代わる新たな評価指標ととなる「金融仲介機能のベンチマーク」を9月に公表しました。
(このベンチマークについては、また次の機会に書いていこうと思います。)
これまで金融庁は金融検査マニュアルに基づいて金融機関を画一的な評価をして
きましたが、これからは、金融機関がお客様である地元の取引先企業をしっかり
ウォッチして地域金融機関として金融仲介機能を十分に発揮できているかという点を
重視するというように抜本的に評価指標を変更するということです。
これを受け、地域金融機関(地銀や信金、信組)は、数字ばかりではなく、
数字に表れない部分を的確に評価し、担保や保証に頼らない融資実績を増やす
方針となっていくことになります。
そこで、我々中小企業はどのように対応していくべきかですが、
当然のことながら、金融庁の方針が変わったからと言って、
銀行があなたの会社の素晴らしさに突然気付くわけはありません。
こちらから何もアプローチしなかったら、銀行があなたの会社の
事業性評価など正しく出来るはずはないのです。
そこで重要になるのが、借り手である中小企業からの積極的な情報開示です。
当然ながら、数字を見なくなるわけではありませんので、決算書や試算表等の
財務資料の定期的な提供は必須です。これまでにも何度もお伝えしてきましたが、
3か月に一度は試算表を提出して近況報告をすべきです。
+αで実績に対する振り返りと今後の方針についても共有できればベターです。
さらに、数字以外の情報、今後の経営方針などについても定期的に
伝えていくことで、銀行はあなたの会社のことを知ることができ、
より的確な評価をすることができます。
そもそも取引銀行があなたの会社のことをよく知らない場合は、
改めて事業概要書を作ってビジネスモデルの説明、強みや差別化ポイント、
市場規模であったり取引先についてをまとめて提出するとよいでしょう。
こうした取り組みは、私の顧問先では、これまでにも行っており、
良好な取引関係の構築にはとても効果的です。
こうしたことを行っている中小企業は、極めて少ないのが現状ですが、
これまでの銀行でも円滑な融資取引に効果的だったのですから、
今後は、もっともっとその重要性が高まっていくという事です。
先日、顧問先のメインバンクの担当者の方と話したのですが、
その銀行ではすでに積極的に事業性を評価した融資に取り組んでおり、
財務評価のみでは難しい案件でも融資実績が出てきていると言っていました。
但し、新規取引先はもとより、既存先でも情報が少ない会社に対して
それをするのは、とてもハードルが高く、もしやるとしても時間も手間も
相当に掛かり、申込企業の積極的な協力がないと出来ないだろうとのことでした。
この話からも普段からの銀行への情報開示が重要だと分ります。
ちなみに、創業融資支援を行う際は、創業計画書を作成しますが、
創業者は過去の実績がないので、まさにこういった定性面が
融資審査では重要視されます。
そういった意味では、創業融資審査に長けている日本政策金融公庫は
このような視点で企業を見る目が銀行よりもあると言えるかもしれません。
銀行は、これまでこういった見方をあまりしてこなかったので、
借り手側から、客観的かつ説得力のある自社アピールの資料を
しっかり用意することが求められることになるでしょう。
ぜひ、こうした事を理解し、今後の銀行取引に活かして頂ければと思います。
最後に注意点として、これからは財務内容は関係なく事業性評価のみで
融資審査が行われるという事ではありません。
財務内容からの判断は当然のことながら、+αとしてこれまで以上に
事業性を見ていく姿勢になるという事です。
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本記事は、赤沼慎太郎発行の無料メールマガジン『起業家・経営者のための「使える情報」マガジン』
から記事を一部抜粋したものです。
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