Vol.207 最近の中小企業に関わる金融環境

配信日:2013年11月12日

中小企業金融円滑化法が今年の3月に終了しておおよそ8か月経ちました。

最近の中小企業に関わる金融環境はどうですか?なんていう
ご質問をよくお受けします。

また先日、主宰する赤沼創経塾の会員限定勉強会で現役の銀行員さんを
お迎えして講義をして頂きましたが、とても興味深いお話があったので、
それらの内容も含め一部このメルマガで共有しようと思います。

まず、銀行をはじめとする金融機関の融資取組姿勢はどうか?
という点についてですが、これについてとても興味深いデータがあります。

日本銀行が発表している統計データを見てみると、
今年の第一四半期(4月~6月)、第二四半期(7月~9月)のどちらも
前年同期比較で金融機関の貸出残高は全国平均でおおよそ2%近く伸びており、
特に地方銀行が伸びています。

一方で、全国信用保証協会連合会の統計データを見てみると
保証承諾の件数、残高それぞれが7月、8月、9月において前年同期比で
下がっており、件数ベースでは各月に開きがあり1%~12.5%程度
下がっていおり、残高ベースでは、概ね7%程度各月下がっています。

以上から何が言えるか。
金融機関の融資残高は増えている一方で、信用保証協会の保証承諾が
減っているということは、つまりは、プロパー対応での貸し出しが
増えているということになりますね。

アベノミクスにより中小企業支援が強化されている中、
銀行も政策の方針に基本的には同調し、貸し出しには積極的に
なってきているという仮説が立ちます。

実際、銀行員の方に聞いてみると、プロパー対応による融資を
積極的に行っている面があり、財務内容の良い企業に対しては、
年利1%を切るような低利率で融資するケースもあるようです。

ただ、実際の現場を見ていても、私が支援している企業さんは
創業フェーズであったり、事業再生フェーズであるということもあり、
積極的にプロパー融資をしているという印象はなかったのですが、
事実、データ的にはそれを表しているのです。

もちろん、景気の上昇により大企業向けの融資が増えている面も
ありますので、全てが中小企業向けということではないですが、
地方銀行の貸出残高が伸びている点を考えれば、中小企業向けの
プロパー融資も伸びていると考えて良いと思います。

また、東京信用保証協会のデータでは、さらに全国平均よりも
減少率が高くなっており、東京都信用保証協会の審査は厳しく
なっている傾向にあるという仮説が経ちます。

東京都は、企業数も多く、大小様々の企業が無数にあるので
一概に全国平均と単純比較することはできませんが。

一方、事業再生フェーズの中小企業への融資の処理はどのように
なっているか。

これについては、金融円滑化法終了から8か月経った今においても
それほど強烈に環境が変わったということはありません。

リスケに対しても、きちんと対応してくれている印象ですし、
リスケの延長もきちんと対応すれば応じてくれています。

もちろん、これまでのような安易な対応はだいぶ減り、きちんと
経営計画を求める傾向になってきましたが、そもそもそうすべき
であるので特段の変化とは言えないと思います。

また、サービサーへの債権譲渡という対応も、それほど増えてません。
私は、円滑化法が終了した後は、銀行の持つ不良性の高いプロパー融資は
サービサーへの債権譲渡が活発になるかと想像していましたが、
現在のところ、それほど増えていないようです。

実際に、サービサーの方とお話しする機会があり、その点について
質問してみましたが、サービサーの方も増えることを期待していた
ようですが、今のところほとんど出てきてないとおっしゃってました。

終了後1年を経過する来年4月頃には、また今と環境が変わっている
かと思いますが、直近の環境は以上のようなイメージです。

もちろん、これは、全体感であり、個別の状況によって全く
違うということもあり得ます。
あくまでも全体感としてご参考として頂ければ幸いです。

本記事は、赤沼慎太郎発行のメールマガジン『起業家・経営者のための「使える情報」マガジン』
から記事を一部抜粋したものです。
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