Vol.299 経営者が知っておくべき民法(相続関係)の改正点 その1

配信日:2018年7月31日

 

民法の相続分野の規定が大幅に見直される改正民法が今月6日の参院本会議にて
成立したことは、ニュースなどでご存知ではないでしょうか。
これを受け、本法は7月13日に公布されています。

 

1980年の改正以来、38年ぶりの見直しという事で、非常に注目さました。

 

今回の見直しのメインテーマは「配偶者の生活の安定」です。
高齢化社会に対応し、残された配偶者の住居や生活資金を確保しやすくする
という事が主眼となっています。

 

本改正の骨子は以下の通りです。

1.配偶者の居住権を保護するための方策
2.遺産分割等に関する見直し
3.遺言制度に関する見直し
4.遺留分制度に関する見直し
5.相続の効力等に関する見直し
6.相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

なお、施行期日は原則として、公布日から1年以内に施行されることと
されていますが、遺言書の方式緩和については、平成31年1月13日から施行され、
配偶者の居住の権利については、公布日から2年以内に施行されることとされています。

 

今回は、このメルマガのテーマの通り、会社経営に関係の深いであろう、
「遺留分制度」と「遺言制度」に関する部分をピックアップして解説します。

 

世間的に注目される部分から少しずれるところもありますが、経営者向けと
割り切ってお読みください。

 

他の部分については、機会があれば触れたいと思います。

 

●遺留分制度に関する見直し

改正により、遺留分減殺請求権から生ずる権利が金銭債権化することとなりました。

 

現行法では、遺留分減殺請求権の行使をすると、通常はすべての財産について
共有状態になってしまいます。

 

相続財産が預貯金だけならまだ良いですが、不動産や自社の株式があると、
そのすべてが共有になってしまいます。

 

例えば、父親である社長Aさんから長男Bさんが事業を承継する場合において、
社長Aさんの所有する事業に必要な不動産や株式は、遺言によりBさんに相続される
ようにすることが多いですが、それが事業に関与していない長女Cさんの遺留分を
侵害しているというようなケースが多くあります。

 

この状態で社長Aさんが亡くなり、長女Cさんが遺留分減殺請求権を行使した場合、
解決するまでは、事業に必要な不動産や自社の株式を事業に関与していないCさんと
共有することになります。このような状態は、事業上において好ましくないので、
通常は、早期の金銭解決を目指します。(価額弁償)

 

しかし、それが解決するまでは、共有状態にあるとなると、
いろいろとややこしいことが起こる可能性もあります。

 

金額面で揉めたりして長期戦になると、かなり厄介な問題に発展します。
事業上の判断で不動産を売却したくてもできないというケースもあります。

 

今回の改正では、遺留分減殺請求権から生ずる権利を金銭債権とすることで、
共有状態の問題が起きることを回避し、はなから金銭的な問題として対応することが
出来る効果が期待されます。

 

また、金銭で解決するにもすぐには資金を準備できないというケースも
想定されますが、この場合、裁判所は受遺者(例の場合、長男Bさん)からの
請求により、全部または一部の支払いにつき相当の期限を許与することが
出来るようになりました。

 

つまり、長男Bさんは、解決するための資金がない場合には裁判所に請求することで、
長女Cさんへの支払の猶予を得られるという事です。

 

相続した不動産については、遺留分の問題から隔離できているので、
金額面等で揉めていたとしても、不動産の処分は別の話として進められます。

 

また、遺留分には、生前に贈与した財産も含まれる為、過去に親からもらった財産、
つまり生前贈与が争いのもとになるケースが多くあります。

 

例えば、自宅購入の際の援助資金や生活費の援助をもらっていたなどですね。
こうした資金が遺留分の計算に入ることは、納得感もありますが、
中には、学生時代に出してもらった留学資金など何十年も前の話を掘り起こして、
争いとなるという話は多く聞くのではないでしょうか。

 

現行法では、遺留分を計算する際の基礎財産に含める贈与の期間制限がありません。
その為、学生時代に親に援助してもらった資金などが掘り起こされることになります。

 

今回の改正では、遺留分の基礎財産に加算するのは、相続開始前の10年間の贈与に
限定されることとなりました。

 

事業承継において、後継者に対して自分の持つ株式を少しずつ贈与していくことで、
だんだんと所有する株式を移していくことがありますが、この株式の贈与についても
もちろん、遺留分の基礎財産の対象となります。

 

今回の法改正により、株式を早い段階で後継者に贈与し、その後10年を経過すれば、
遺留分の問題は生じないことになります。

 

財務状態の良い会社の株式は、驚くような評価となり、株式の承継が遺留分に
大きな影響を与えてしまうケースが多いですが、この制度を上手く活用することで、
株の承継による遺留分の問題を回避することが出来るようになります。

 

以上が経営者に知っておいて頂きたい遺留分制度に関する見直しについての内容です。
次に遺言制度に関する見直しについて触れたいのですが、長くなってしまったので、
次回にお伝えしたいと思います。

 

ぜひ、ご参考としてください。

 

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本記事は、赤沼慎太郎発行の無料メールマガジン『起業家・経営者のための「使える情報」マガジン』
から記事を一部抜粋したものです。
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