Vol.293 1500万円の節税をするべきか否か

配信日:2018年5月29日

 

前回、決算対策に関する内容をお伝えしましたが、
私の顧問先にも3月決算の会社が何社かいらっしゃいます。

 

私の顧問先の多くは、銀行取引が経営上の重要な課題の一つとなっていますが、
各社、しっかりと円滑な銀行取引が進むような決算になりました。

 

その内の1社さんは、事業承継をして社長就任1年目の決算で過去最高売上を
達成することができました!
これを継続していくことが大切ですが、まずは最高のスタートが切れたことを
私もとても嬉しく思います。

 

さて、今日は、前回の決算対策の内容の続きという事ではないですが、
顧問先からのご相談内容で、皆さんにとっても考え方の一つとして
参考にして頂けるエピソードがあったので、お伝えしようと思います。

 

実際の内容を少し編集して、こまごまとした背景は割愛し、
数字も単純化して、分りやすくシンプルにお伝えします。

 

年商30億円ほどのA社さんは、優良な企業で銀行取引も良好で、
順調に業績を拡大させているところです。
今期6月の決算は、税引前当期純利益が7,000万円ほど出る見込みです。

 

そこで、近々予定している4,000万円ほどの経費について、タイミングを早め、
今期中に取引して計上するか、当初予定通り来期にするかを悩んでいました。

 

今期に計上すれば、7,000万円の利益が3,000万円になり、
税金はざっくり1,500万円ほど節約することが出来ます。

 

このような状況の場合、あなたならどのような判断をされますか?

 

1,500万円と言えば、大きな金額です。
それだけのキャッシュを残すには、大変な企業努力が必要です。
それが、一か月タイミングを早めるだけで、達成することが出来そうです。

 

おそらく、多くの方がタイミングを早めて今期に計上して節税すべきだと
判断するのではないでしょうか。

 

私は、当初予定通りのタイミングで、7,000万円の利益で着地すべきでしょう。
と、アドバイスしました。

 

A社の財務担当役員の方もそもそも同意見で、確認のために相談したようです。

 

私の顧問先には、A社さんのように、社長や経営幹部の経営判断についての考え方の
確認やそれについての客観的な意見を求める。といったアドバイザリー契約での
お付き合いの会社さんも何社かいらっしゃいます。

 

なぜ、私が1,500万円も多く税金を払う事を選択するような
アドバイスをしたのかというと、もちろん理由があります。

 

A社は、来期に大きな投資を予定しており、その際には、
銀行から5億円ほどの資金調達をすることを検討していたからです。

 

業績の良いA社の現在の平均借入利率は、プロパー融資で1%を切っています。
ここでは、平均利率0.8%としておきます。

 

しかし、現在の借入残高も決して少なくはなく、大半が設備資金ではあるものの
年商の40%程度のボリュームとなっています。

 

次の借入で5億円を借り入れれば、借入残高は年商の半分を超えてきます。
もちろん、その投資により、さらに年商規模は拡大し、それに伴い、
年商に対する借入残高の比率も下がりますが、借りる時点では年商の50%を
超える見込みです。

 

また、決算書上のキャッシュフローも、7,000万円の利益を3,000万円に圧縮して
しまうと、簡易的に計算するキャッシュフロー(税引後経常利益+減価償却費)が
年間返済額を下回ります。

 

すると、場合によっては、来期の借入申込の際、銀行の判断として、
企業規模に対する借入残高が過大気味であり、返済に対するキャッシュフローも
不足しているという状況から、利率をこれまでより高めに設定するという判断も
あり得るでしょう。
最悪の場合、希望額の融資を受けられないこともあるかもしれません。

 

もし、節税することで財務が悪化し、これまで年率0.8%で借りられていたものが
仮に1.2%になってしまったとしたらどうでしょう。

 

あくまでも仮定の話ですが、5億円借りた際の0.4%の違いは大きな金額になります。
年間の利息額の増加は、単純に計算して5億円×0.4%=200万円です。

 

これを借入期間10年の元金均等返済で借りた場合、1,000万円ほど利払いが
増える計算になります。あくまでもシンプルにざっくり計算した場合です。

 

また、そもそもその4,000万円の経費は、来期予定しているものをタイミングを
早めるだけなので、その分来期の利益は当初予定より4,000万円増え、
どちらにしても来期の決算でその分の税金が発生します。

 

A社は、来期も黒字予測なので、先延ばしにしても、税金の発生する時期が
今期になるか来期になるかだけの話です。

 

このように、近視眼的に見れば、今期の納税額を1,500万円節約でき、手元資金を
減らさないで済むので、計上のタイミングを早めたいところですが、中期的に見れば、
さほど意味のない行為であり、それどころか、予定している重要な投資計画に
重大な懸念を生じさせるリスクまであります。

 

このように考えれば、誰もが今期は予定通りの利益を計上すべきだと思うと
思うのですが、来期の話を知る前には、多くの方が1,500万円の税金を
節約すべきだと考えたのではないかと思います。

 

これは、実際の経営においては、来期の計画がしっかり立っていなければ、
このような判断に繋がりません。
計画がなければ、未来予測がないので、単純に今期の税金を少なくしたい。
という気持ちが先行するでしょう。

 

A社は、優秀な財務担当役員の方がしっかりと管理されているので、
正しい判断が出来ました。
ぜひ、このメルマガをお読みの方は、A社さんのように中長期的な視野を
持ちながら経営をして頂きたいと思います。

 

今回のケースは、年商30億円の企業であり、年商数億円の会社から見ると、
規模が違うため、何となく自分事として読めないかもしれませんが、
桁が一つ違ったとしても考え方は同じです。

 

上記の話を単純に一桁減らせば、700万円の利益を300万円に減らして、
税金を減らすことで、来期に予定する5,000万円の資金調達が出来なくなるリスクや、
金利が上がって利息負担が増えるリスクが発生するという事です。

 

もちろん、納税負担を軽減する方が重要な局面であれば、
納税額を減らす選択をすることもあります。

 

各社の状況により、判断が違ってくることではありますが、
円滑な銀行取引を達成することが重要な局面においては、むやみに節税を
することがリスクとなることを知っておくことは、とても重要です。

 

ぜひ、ご参考として下さい!

 

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本記事は、赤沼慎太郎発行の無料メールマガジン『起業家・経営者のための「使える情報」マガジン』
から記事を一部抜粋したものです。
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