Vol.291 信用保証制度の見直しで変わる銀行取引

配信日:2018年4月9日

配信日:2018年4月9日

 

4月に入って、様々な制度の改正や見直し等の変更が実施されています。

 

例えば、中小企業にとって関係の深いものですと
以下のような情報はチェックしておくとよいでしょう。

 

●日本公庫の融資制度の拡充
https://www.jfc.go.jp/n/info/pdf/topics_180402b.pdf

 

●事業承継時の贈与税・相続税の納税を猶予する事業承継税制が大きく改正されました。
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2018/180402shoukeizeisei.htm

 

●平成30年度税制改正パンフレット
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2018/180330zeiseikaisei.pdf

 

●信用補完制度の見直し
http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/shikinguri/hokan/index.htm

 

今回は、中小企業の資金調達に深く書かわる「信用補完制度の見直し」について、
簡潔に解説しますので、理解を深めて頂ければと思います。

 

中小企業が銀行から融資を受ける際に利用する機会の多い信用保証協会に
関わる内容ですので、とても重要です。

 

金融機関の業界紙や機関誌からこのテーマでの執筆依頼を頂き、
これに関して記事を書く機会が多かったのですが、
今回は、本コラムをお読みの皆さまに分りやすく伝わるように解説いたします。

 

「信用補完制度の見直し」については、平成27年11月から議論されてきており、
昨年の第193回通常国会(平成29年1月20日~6月18日)にて成立しました。

 

そして、いよいよ今月1日(平成30年4月1日)より施行されています。

 

今回の見直しにより、地域金融機関に期待されるものとは何か?
といえば、ざっくりと言えば次のようなイメージになります。

 

これまで金融機関は中小零細企業に対して信用保証協会の保証付き融資を
中心に取組み、金融機関自体はなるべくリスクを取らないで済むように進めてきたが、
今後は、金融機関もプロパー融資を適切に組み合わせてリスクを持つようにしなさい。

 

・そして、そのリスクを抑えるためにも金融機関は、融資先企業の将来性を
的確に判断する目利き力を養うこと、融資実行後も融資先企業の経営支援を
積極的に行うことで、貸し倒れリスクを軽減させる努力が必要である。

 

・これこそが、中小零細企業を支える地域金融機関としての本来あるべき姿である

 

これは、森信親金融庁長官が2015年7月に就任して以来進めている
金融行政改革の中で一貫して発信されていることでもあります。

 

このようなことが強く求められる中、金融機関は、信用保証協会の保証の付かない
プロパー融資を増やしても、不良債権が増えないような取り組みをしていかなければ
なりません。

 

単純に考えれば、貸し倒れリスクの低い、財務の優良な企業に貸せば良いのですが、
その様な優良企業は、銀行同士の熾烈な競争が繰り広げられ、優良企業だけに
貸していくという訳にもいきません。

 

これまでなら、保証協会付きの融資で貸していた会社に対しても積極的に
プロパー融資をしていかなければならないという難しい課題を背負ったわけですが、
その課題をクリアするための一つの取り組みが、「事業性評価融資」の推進
ということになろうと思います。

 

事業性評価融資については、これまでもこのメルマガで何度も触れてきましたが、
決算書等の財務データや担保・保証に必要以上に依存せずに、企業の事業内容や
成長可能性などを適切に評価して行う融資のことです。

 

しかし、これはまさに「言うは易し、行うは難し」で、一朝一夕で取り組める
ものではありません。取引先企業の将来性の判断は簡単なことではないからです。

 

将来性を的確に判断するためには、事業内容や現場の状況、抱える課題を理解し、
的確に定量面、定性面の実態把握をすることが欠かせませんが、これまでの銀行は、
そういった取り組みが十分ではありません。

 

取引先企業を深く理解するためには、適度な頻度の企業訪問により時間を掛けて、
信頼関係を構築することが欠かせません。

 

実際、中小企業と銀行が信頼関係をきちんと作れているケースは少ないでしょう。

 

しっかりとした信頼関係を構築するためには、銀行からの一方的な取り組みだけでは
達成できません。我々中小企業側も正しく行動を取っていく必要があります。

 

正しい行動とは、中小企業自らの積極的な情報開示がその一つです。

 

例えば、私の顧問先では、試算表や予実管理表、資金繰り表を定期的に提出し、
年に一度は、決算報告及び経営計画の報告を行っていますが、このような取り組みを
継続的に行っていると、取引銀行の理解度が深まります。

 

取引銀行は、資金繰り状況をおおよそ掴んでいる為、資金ニーズを事前に把握
できることから、融資対応も非常にスムーズに行ってくれます。

 

しかし、現実を見てみると、中小企業の大多数は、資金繰り表を作っておらず、
タイムリーな試算表作りもできていません。
今のままの取り組みでは、十分な信頼関係の構築は難しいと言えます。

 

今回の信用補完制度の見直しは、金融機関い積極的なプロパー融資を促しており、
一見、中小企業にとって喜ばしい取り組みに見えますが、正しく行動していない
中小企業にとっては逆風になりかねません。

 

これまでは、融資を申込めば、銀行は保証協会に保証依頼をし、保証承諾が得られれば、
融資をしてくれていましたが、これからは、保証協会が申込金額の一部に対しては
保証承諾をするものの、一部はプロパー対応をするように要請するケースも増えてくる
ことが予想されます。

 

実際に私の顧問先でもそのような保証協会の対応がありました。

 

その場合に、銀行があなたの会社にプロパーは出せないと判断したならば、
融資そのものが実行されない。という事態が発生する可能性があるという
ことなのですから、これは大変な事なのです。

 

そうならない為にも、自社の経営状態を正しく把握し、それを対外的に示せるように
整理し、定期的に取引銀行と共有することが重要になってくるでしょう。

 

ぜひ、このような変化をきちんと理解し、体制を整えてください。

 

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本記事は、赤沼慎太郎発行の無料メールマガジン『起業家・経営者のための「使える情報」マガジン』
から記事を一部抜粋したものです。
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