Vol.285 金融レポートから得る銀行取引のポイント

配信日:2017年12月12日

 

少し前になりますが、10月25日に金融庁から平成28事務年度の
「金融レポート」が公表されました。

 

金融庁の事務年度は、7月から翌年の6月までですので、平成28事務年度とは、
平成28年7月~平成29年6月の期間という事になります。

 

このレポートと「平成29事務年度 金融行政方針」に目を通すと
金融行政に関しておおよそ流れを知ることが出来るので、経営者としては
一度読んでおくと良い資料なのですが、日々忙しい経営者の皆さんは、
なかなかその為に時間を割くことが出来ないのが実際ではないでしょうか。

 

今回は、金融レポートに書かれている内容のうち、中小企業に関係の深い
地域金融機関(地方銀行、信用金庫、信用組合)に関する内容を簡単に
お伝えしたいと思います。

 

これまでも金融庁は、地域金融機関の経営課題として、金融緩和政策の継続により、
長短金利差が縮小し、収益性が低下している点や生産年齢人口の減少により借入需要が
低下し、貸出残高が減少するなどから、優良企業や担保・保証のある企業に偏った融資や
国債への投資だけで収益を確保する旧来のビジネスモデルを維持することは困難となる
可能性があると問題提起をしていました。

 

実際に直近の平成29年3月期の決算を見ても、現時点ではバランスシートの健全性に
問題があるわけではないけれども、貸出利鞘の縮小により本業利益がマイナスとなり、
収益性の問題を抱えていることが浮き彫りになりました。

 

そうした中、利益の確保に向け、有価証券運用による短期的な収益への依存を
一段と高めており、その結果、金利リスク量が増加している状況にあります。

 

では、貸出は減っているのかといえば、そういう事ではなく、地域銀行全体の
貸出残高は増加傾向にあるのです。

 

ただ、その内訳を見ると、多くの地域銀行でアパート・マンションローンを含む
不動産業向けの融資が増加しており、一般的な中小企業向け融資が増えている
わけではありません。

 

今回の金融レポートでは、、8,901社から得たアンケート結果も公表しています。
(地域銀行をメインバンクとする中小企業を中心に約3万社にアンケート調査)

 

そのアンケート結果からは下記のような傾向を見ることが出来ると示されています。
(一部抜粋)

 

・銀行は、債務者区分上位の企業をより多く訪問する一方、経営課題を抱えている
債務者区分下位の企業への訪問が少ない

・メインバンクは担保・保証がないと融資に応じてくれないと感じている企業が
全体の4割、要注意先以下で5割強、正常先上位でも2割強となっている

・過去1年以内に資金繰りに困った企業が2割強(要注意先以下では約半数)存在し、
そのうち特段支援を受けていない企業が約3割(要注意先以下では約4割)存在する

・過去4年間について、貸出金利回りの低下幅が緩やかな地域銀行上位30行は、
経営上の課題や悩みの把握、提供するサービスの効果の双方において、利回り低下幅の
大きい地域銀行下位30行よりも顧客企業から比較的高い評価を得ており、特に要注意
先以下の企業やメイン先の企業からの評価に比較的大きな差がある

 

これを受け、金融庁は、人口減少等の厳しい経営環境に直面し、経営改善や事業再生、
生産性向上が必要な企業が多くあり、地域金融機関がこうした企業の事業内容を
よく理解し、経営改善や生産性向上といった価値向上につながる有益なアドバイスや
ファイナンスを提供することは、金融機関自身にとっても安定的な顧客基盤と収益の
確保が可能となり、地域経済の活性化にも貢献することができるものと考えています。

 

さらに金融庁は、顧客とのリレーションシップの強化により安定した顧客基盤を
築いている地域銀行が規模の大小にかかわらず、比較的安定した収益を確保している
として、3行の事例を示しています。

 

このように、レポートを見ると、金融庁が地域金融機関に企業とのリレーション強化と
顧客本位の業務運営の推進を強く望んでいることがよく分ります。

 

こうした事は、近年言われ続けていることではありますが、今後その方針がさらに
強化され、金融機関もそれを受け、さらにその姿勢を強めていくことでしょう。

 

そこで、我々中小企業は、その流れに乗っていかなければなりません。
何度何度もこのメルマガでお伝えしていることですが、その流れに乗るには、
適切な情報開示が欠かせません。

 

金融機関の一方的な行動でリレーションを強めることは不可能です。
企業側からも協力的な行動がなければ良い関係を構築することは出来ません。

 

金融機関も良い事例、支援実績を作りたいと考えていますので、
取り組みやすい取引先企業には積極的に様々な提案をしてくる可能性が高いと
考えられます。取り組みやすい企業とは、適切な情報開示をしている企業です。

 

その対象の企業となれば、良い影響を受ける事が出来るかもしれませんし、
そういった下心は抜きにしても、今後しっかりと自社の情報開示を適切に行い、
金融機関が支援しやすい環境を自ら作ることは、非常に重要な企業活動と
なっていくことでしょう。

 

自社を正確に分りやすく伝えるための資料の準備、普段からの財務管理を
きちんとしていなければ、それは達成できませんので、普段からの経営管理を
しっかりすることがその前提となります。

 

ぜひ、ご参考として下さい!

 

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本記事は、赤沼慎太郎発行の無料メールマガジン『起業家・経営者のための「使える情報」マガジン』
から記事を一部抜粋したものです。
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