Vol.271 中小企業の事業承継の大きな課題とは?

配信日:2017年3月29日

配信日:2017年3月29日

経営者の高齢化が進む中、中小企業の事業承継は、非常に深刻な国家的課題の一つです。
多くの企業は、課題と認識しながらも具体的な対策ができていないのが現状です。

 

弊社も事業承継のご支援には積極的に取り組んでおり、顧問先においても
事業承継の計画策定、そして計画の実行支援を行っている会社さんが何社も
いらっしゃいます。

 

先日、行政書士向けのセミナーにて事業承継をテーマに話をさせて
頂きましたが、多くの方が興味を持つテーマになっています。

 

事業承継とは、文字通り会社の事業を後継者に引き継ぐことですが、
承継する要素としては、「経営の承継」と「資産の承継」の大きく2つに
分けられます。

 

事業承継の専門家としてパッと思いつくのは、公認会計士さんや弁護士さんですが、
最近は税理士さんも積極的に取り組んでいる方が増えました。

 

これらの専門家が支援するのは、主に「資産の承継」であることが多いと思います。
多くの中小企業は「社長=大株主」であり、現社長の所有する株式や事業で使っている
不動産などを後継者にどのように引き継ぐか。
税金や法律(権利関係等)の問題をクリアして、よりスムーズに資産を承継するスキームを
描き支援します。

 

特に株式の承継は、つまり会社の支配権の承継であり、
事業承継を行う上で、とても重要な要素になりますので、
これをスムーズに承継させることは、極めて重要な対策です。

 

しかし、例えば中小企業基盤整備機構による事業承継実態調査報告書の
アンケート結果の一つ、「事業承継で後継者が苦労したことは何か」
という内容を見てみると上位に並ぶのは、次のような内容です。

 

「先代経営者から事業を引き継ぐにあたり苦労した点はありましたか。」
(事業承継実態調査報告書(H23年3月)より)
・経営力の発揮(35.8%)
・金融機関からの借入(24.7%)
・取引先との関係の維持(24.7%)
・一般従業員の支持や理解(19.3%)
・金融機関との関係の維持(19.1%)
・役員や経営幹部の支持や理解(9.1%)

 

つまり、先代が築いた「信用力」を受け継ぐ事に苦労している。という事
だと私は解釈しますが、これは「経営の承継」が課題であるという事です。

 

事業承継は、「経営の承継」と「資産の承継」の2つに大きく分けられると
前述しましたが、本当の意味での事業承継を成功させるためには、
「経営の承継」が極めて重要であり、そこに大きな課題があるのです。

 

せっかく資産を承継しても経営を承継できなければ、会社が空中分解、
事業が破綻してしまうこともあり得るでしょう。

 

しかし、この部分を十分に支援している専門家はまだ少ないのが現状です。
逆に言えば、「資産の承継」に関する支援者は充実しているから課題の上位に
上がらないのかもしれませんが、いずれにしても「経営の承継」に関する
対策が不十分である事実は変わりません。

 

弊社では、この「経営の承継」の支援を中心に行っていますが、
達成する為には、どうしても時間が必要です。やはり十分な対策と
スムーズな承継を実現するためには、少なくとも5年。余裕を持って
行うためには10年くらいの時間をかけて現経営者から後継者に
承継していく必要があります。

 

数学のように一つの正解があるわけではない世界ですので、
とても難しく、苦労も多いものですが、現経営者と後継者と共に
目指す未来を描いていく仕事は、やりがいもありワクワクします。

 

もちろん、ワクワクするばかりではなく、その過程では衝突も起き、
挫折しそうな時期を乗り越えたりするわけですが。
現在進行形で、厳しい時期を乗り越える過程の会社さんもいらっしゃいます。

 

私の限られた経験の中で言えることは、特に親族内承継の場合、
親族であるが故、お互いに素直になれずに衝突が起きたり、
本心が伝わらずにすれ違ってしまったりすることが多いので、
行司役として第三者が関与し、通訳であったり、物事を冷静に
整理する役をすることでスムーズに進むことが出来ると感じます。

 

このメルマガを読んでくださっている経営者さんの中にも
事業承継を課題としている会社もたくさんいらっしゃると思いますが、
ぜひ準備は早め早めに着手し、一歩一歩着実に前身していく行動をして
頂くことをお勧めします。

 

 
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本記事は、赤沼慎太郎発行の無料メールマガジン『起業家・経営者のための「使える情報」マガジン』
から記事を一部抜粋したものです。
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