Vol.237 複数の会社を経営していると融資枠も増えるか?

配信日:2015年6月23日

配信日:2015年6月23日

経営者の方からご相談を受けてお話を聞いていると、それほどの規模ではないのに
グループ会社を何社も運営しており、それぞれが複雑に絡み合っていて、
各会社の役割もあやふやとなっているケースに出会うことが多くあります。

例えば、業種別や機能別に法人を作って、別々にきちんと管理している
というようなケースはほとんどなく、設立するときには、おおよその戦略があり
役割を想定して設立したものの、思惑通りに事業が展開せず、遺物として残り、
今となってはほとんど存在意義がない。といったケースです。

そうであれば、管理コストもかかるので、清算してしまえば良いのですが、
何かの時に使えるかもしれないからとりあえず置いておく。という判断を
される方が少なくありません。

また、こういった考えをする方もいます。

メインの会社で借りられなくなった時にこっちの会社で借りれば良い、と。

この考え方をしている方は、意外と多くいらっしゃいます。
複数の会社を経営していれば、それだけ借りられる機会もボリュームも増えると。

例えば、信用保証協会の保証枠は1社当たり2億8千万円(内、無担保枠8千万円)で、
セーフティネット保証など、別枠を合わせると5億6千万円(内、無担保枠1億6千万円)
となりますが、2社経営していれば2社分の保証枠、つまり2倍の借入れが可能となる
と考えるのです。

はたして、本当にそうでしょうか。

残念ながら、実際はそんな甘いものではありません。

もちろん、それぞれの財務状態、管理状態にもよりますが、
多くの中小企業グループは、グループ内で商取引が行われていたり、
資金融通がされているていることが多いので、別法人とはいえ、
実態としては、いわゆる単なる「部署」だという状態にあります。

それぞれの会社が独立独歩できていれば、金融機関もそれぞれの
会社に与信枠を設定しますが、一般的な中小企業の場合では、
グループで一つの会社として考える傾向にあります。

したがって例えば、X社長が株主となっているA社とB社の2社を
経営している場合やX社長が株主となっているA社とその子会社のB社の
2社を経営している場合は、A社とB社で1社分の与信枠しかない
と考えるべきなのです。

残念ながら、与信枠は2倍にはなりません。

また、A社の財務状況が悪化し、リスケ(返済額の減額)を行った場合で、
B社は正常弁済をしていたとしても、B社は融資を受けられるかと言えば、
A社がリスケをしていればB社もその影響を受け、新規融資は受けられない
と考えるべきなのです。

もちろん、状況によって判断も変わってくるので、100%そうだとは
言いませんが、基本的にはそうだと考えた方が良いです。

冒頭の話に戻りますが、相談を受ける中で、複雑なグループ構造のために
実態把握ができていない社長に、シンプルにするためにも整理されることを
お勧めすると、抵抗感を示されることがあり、よくよく理由を聞いてみると、
こうした事を考えているという場合が多くあります。

ぜひ、この事実を知っていただきたいと思います。

本記事は、赤沼慎太郎発行の無料メールマガジン『起業家・経営者のための「使える情報」マガジン』
から記事を一部抜粋したものです。
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