Vol.221 ケジメのない社長

配信日:2014年7月9日

配信日:2014年7月9日

会社を経営している方は、一般的にサラリーマンの方よりも
多くのリスクを背負っていると思います。

特に中小企業で銀行から借入をして経営をしている場合は、
その借入の連帯保証人となり、場合によっては私財を担保提供して
経営を行っています。

したがって、会社が倒産すれば全て連帯保証人である社長個人に
その借金は降りかかりますので、会社の倒産イコール社長個人も破産
というケースは、非常に多くあります。

そういった問題で、先日もお伝えした「経営者保証に関するガイドライン」
が策定されて、いろいろと検討されているわけですが、現在においては、
中小企業の社長は原則、連帯保証人になります。

このように、中小企業経営者は、自らを人質にして経営を行っている
ともいえる状況ですが、場合によっては、社長自身以外の方にも影響が
及ぶことがあります。

それは、社長以外の第三者を連帯保証人に入れている場合です。

多くの社長は、その事実をはっきりと認識しており、
その連帯保証人の方に迷惑をかけない様に経営を安定させる
努力を行っています。

ところが、たまに見るケースですが、考え方の甘い社長に見られるのが、
会社の経営に関与していない親に連帯保証人となることをお願いして
なってもらっているケースや親の資産(主に不動産)を担保に融資を
受けているケースで、他の兄弟にその事実を隠していることがあります。

親に頼ってしまっているという自分の情けない姿を兄弟に
見せたくない。知らせたくない。という想いがあるのでしょう。

そんな状態において、親が他界した場合は問題が発生します。

ここからがとても重要なことですが、親が死亡すれば、
当然に相続が発生します。

この時点で、この社長が他の兄弟に親に保証人になって
もらっていることを隠し続けた場合、どうなるでしょう。

連帯保証人たる地位は、相続対象となりますので、
何もしなければ、相続人が連帯保証人となってしまいます。

保証債務よりも相続する財産の方が大きければまだ良いですが、
相続する財産よりもはるかに多額の連帯保証債務を相続してしまった
としたら大問題です。

負の財産の方が多い場合は、通常は相続放棄を行いますが、
社長がそういった状況を兄弟に知らせなかったために、
親が死亡を知ってから3カ月を過ぎてしまった場合、
原則、相続放棄ができません。
(状況によっては、保証債務の存在を知ってから相続放棄を
することができる場合があります。)

こうなってしまうと、親どころか、会社の経営に
全く関与していない他の兄弟にまで迷惑をかけるという
最悪の状態に発展してしまうのです。

これを読んで、多くの社長さんは
「そんなケジメのない経営者はいないだろう」
と、思われるかと思います。

しかしこれは、現実的にあった話です。
私の顧問先の話ではありませんが。

こういった話は、多くの場合、経営がうまくいっていない
会社に起こる話ですが、経営がうまくいっていない状況ですと、
なかなか周りの人に話せないという気持ちはよくわかります。

しかし、自分のプライドを守るために、親族に迷惑をかけるような
ケジメのない経営者では、そおそも会社を発展させることなどできません。
もちろん、親族でない第三者に迷惑をかけるのはもっとお粗末です。

親を会社の借入に関与させている場合は、
相続のことも十分に気を付けて対応して頂きたいと思います。
逆に、兄弟姉妹に中小企業経営者がいる場合は、そういうことも
あり得るとして、対応していくことが必要かもしれません。

本記事は、赤沼慎太郎発行の無料メールマガジン『起業家・経営者のための「使える情報」マガジン』
から記事を一部抜粋したものです。
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