Vol.215 社長が連帯保証人にならなくても融資が受けられる!?

配信日:2014年4月28日

配信日:2014年3月10日

ここ最近、創業融資関連のお話が続きましたが、
すでに起業されている方にとっては、今日のお話の方が興味深いかと思います。

すでにご存じの方も多いかと思いますが、先月2月1日より
「経営者保証ガイドライン」というものの運用が始まっています。

「経営者保証に関するガイドライン」とは、日本商工会議所と全国銀行協会が
共同で設置した「経営者保証に関するガイドライン研究会」により策定され、
昨年12月5日付けで公表されたものです。

一般的には、中小企業が融資を受ける際に経営者による個人保証(経営者保証)が
付くこととなりますが、経営の規律付けや信用補完などの効果がある反面、
経営者保証が足かせとなり思い切った事業展開が出来なかったり、事業再生に
悪影響を与える要因となっているなどが指摘されていました。

これらの課題に係る方向性を具体化することを目的として制定されたものです。

端的に言うと、

・ある一定の要件を充足するのであれば社長を連帯保証人に取らない

・既存の借入についても、経営者保証を外すことも検討

・廃業する際などで会社が返済しきれない部分について、個人保証している
社長から回収する場合、返済に充てるために社長の資産を全て処分するのでは
なく、状況に応じて対応し、社長個人が再起しやすいように考慮する。

などといったものです。

これを聞くと、「これからは社長が保証人にならずに融資が受けられる!」
と良いところだけが頭に残ってしまいそうですが、そう簡単な話では
ありません。

当然ですが、貸し手である金融機関にとっては、リスクが増える
ことになりますので、それに耐えうる状態になっている会社のみが
対象となります。

ガイドラインの内容を以下に簡単に説明してみます。

経営者保証を求めることが止むを得ないと判断された場合などに
経営者と保証契約を締結する場合、金融機関は、以下の点について、
主たる債務者と保証人に丁寧かつ具体的に説明することとされています。

1.経営者保証契約の必要性の説明

2.原則として、保証履行時の履行請求は、一律に保証金額全額に対して
行うものではなく、保証履行時の保証人の資産状況等を勘案した上で、
履行の範囲が定められることを説明。

3.経営者保証の必要性が解消された場合には、保証契約の変更・解除等の
見直しの可能性があることを説明。

経営者保証を求めない場合の要件としては下記の通りです。

(1)法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている。
(2)法人と経営者の間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えない。
(3)法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る。
(4)法人から適時適切に財務情報等が提供されている。
(5)経営者等から十分な物的担保の提供がある。

つらつらと並べてみましたが、多くの中小企業は個人と法人が
明確に線引きできていませんので、そこら辺がハードルになりそうです。
また、当然ですが、法人のみの資産力、収益力が十分であることなどが必要です。

上記の(1)~(4)の要件を全て満たし、信用保証協会が経営者保証が
不要であると判断する場合は、「経営者保証ガイドライン対応保証制度」という
制度を利用して「経営者保証なし」にて融資が可能になります。

ちなみに、この「経営者保証ガイドライン対応保証制度」には、
「担保ありで経営者保証なし(有担保無保証人)」のものと
「担保も経営者保証もなし(無担保無保証人)」の2つケースが
あります。

詳しくは、各信用保証協会のホームページ等に出ていますが、
具体的に財務指標が示されています。

無担保無保証人にて融資を受けるためには、以下の(1)を充足し、
かつ(2)又は(3)のいずれかを満たす必要があります。

(1)自己資本比率が20%以上であること。
(2)使用総資本事業利益率が10%以上であること。
(3)インタレスト・カバレッジ・レシオが2倍以上であること。

これは、なかなかに高いハードルではないでしょうか。
経営が芳しくない会社にとっては、当然高いハードルとなりますが、
経営が順調でも、過度に節税しているような会社ですと、
このハードルを越えられない会社も多いのではないかと思います。

なお、有担保無保証人の場合は、
以下の(1)及び(2)の2つを満たす必要があります。

(1)上記の無担保無保証人要件(1)~(3)までのいずれか
1項目以上を充足すること。
(2)法人及び経営者本人等の所有する不動産担保等にて
保全の充足が図られていること。

つまり、例えば自己資本比率が20%以上あって、
会社若しくは社長の所有する不動産を担保提供することで
借入額を十分にカバーできれば社長は連帯保証人にならないでも
良いということですね。

なお、この「経営者保証ガイドライン対応保証制度」を利用する場合は、
取扱金融機関は、本制度の融資実行と同時に本保証制度融資額の6割以上の
金額にて同等の融資条件(貸付金利を除く)にてプロパー融資を出す
ことを要すとし、協調融資をすることを条件としているようです。

これは、金融機関にとっても大きなハードルとなりそうです。。。

このように、これまでは経営者保証が必須であったものが
一定の要件を満たせば、必要なくなるというものであり、
これまでの中小企業融資の常識を覆すものではありますが、
この要件をクリアできる会社はそう多くはないのではないかなと
個人的に思っています。

しかし、まだ運用されて間もないわけですし、今後の中で必要に応じて
見直しもされていくのだと思います。
この制度がもっと使い勝手がよくなり、活用できる会社が増えていくと
良いですね。

中小企業側にとっては、これからの会社経営は、個人と法人の
線引きを明確にし、きちんと経営を行っていくということが
求められていくということが言えそうです。

本記事は、赤沼慎太郎発行の無料メールマガジン『起業家・経営者のための「使える情報」マガジン』
から記事を一部抜粋したものです。
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