Vol.200 銀行に債権放棄はしてもらえるのか?

配信日:2013年9月20日

事業再生のコンサルティングをしていますと、お客様から「銀行に債権放棄をしてもらうこともできるのですよね?」と期待を持って質問されることがあります。

債権放棄とは、借り手の企業から見れば債務免除ということになり、つまり、銀行から借りた融資の返済が免除されることです。

借り手からすれば、夢のような話ですよね。
融資の返済さえなければ資金繰りを回していける。という会社さんは結構多く、債務免除を受けたいと思うのは当然でしょう。

しかし、現実はそんなに甘くありません。
特に年商5億円以下の中小企業が銀行に債権放棄を期待することは、現実的には、とても難しいと言わざるを得ません。
(明確な年商のラインがあるわけではありません、あくまでもイメージです)

私の経験上でも、お付き合いのあるコンサルティング会社の事例を聞いても中小零細企業が銀行から債権放棄をしてもらえた事例は、ほぼありません。(第二会社方式(会社分割等)は除きます。)

中小企業再生支援協議会という公的な事業再生支援の機関があり、そこを通せば、債権放棄が受けられるという話が独り歩きしている感がありますが、現実的には、公表されている実績を見ればわかる通り、直接放棄による金融支援件数は10%程度であり、7割以上はリスケジュールでの金融支援となっています。

それでは、中小企業再生支援協議会を利用する意味はないのかといえば、ないわけではありません。
例えば、独自に銀行にリスケジュールをお願いする場合、通常は6か月~1年程度の期間での対応となり、その後は都度更新ということになりますが、協議会を絡めることにより3~5年程度の長期計画の中でリスケを組めるなどのメリットがあります。

デメリットとしては、経営状態の精査に時間がかかることが多く、その間に状況がさらに悪化してしまうというケースもあります。
事業再生は、一日でも早く取り組む必要がありスピードが求められます。

また、少し前にも話題になって、各地で組成されている中小企業再生ファンドから再生のために出資を受けたいというご相談も多いですが、これも難しいのが現実です。

中小企業再生ファンドからニューマネーを出資してもらえるケースは非常に少なく、現実的な機能としては、サービサーと同じように、銀行から不良債権を買取るということが多いようです。

サービサーとの違いは、利益を追求する民間組織ではない為長期の回収を視野に中小企業の再生を促進するという点です。

中小企業が結果的に債権放棄の効果を得られるケースは、DPO(ディスカウント・ペイ・オフ)と呼ばれる手法によるものが多いです。
これは、銀行が不良債権となっているプロパー融資をサービサーに廉価で売却し、その後、サービサーと債務者とで、ある程度の金額により和解を行い、結果的に残った債務をサービサーが放棄するというものです。

※DPOについては、拙著『銀行としぶとく交渉して
ゼッタイ会社を潰すな!』でも解説させて頂いています。
https://directform.jp/rdr.do?id=5012

こういった形で結果的に債権放棄の効果を得るというケースは、中小企業の再生現場では比較的多く、私のクライアントでもこうして債務額を減らした例はあります。

ただし、これを行うことは、もともと債権を持っている銀行との関係が切れることになり、ある程度のリスクがありますので慎重に考えて行動しなければなりません。

特に製造業などのように事業継続のためには、ある程度の設備投資を継続していく必要のある会社は、銀行との付き合いはとても大切ですので、安易に行うべきではないでしょう。

債務免除が得られれば再生に向けた効果が絶大であることは間違いありませんが、以上の通り現実的には、銀行から直接放棄してもらうことは、そうそう期待できるものではありません。

損益の改善を行い、利益を出せる体質にし、キャッシュフローを高めて資金繰りを良くしていくと同時に、いらない資産は徹底的に換金するなど処分していくという当たり前のことを着実に行うことが何よりも再生への近道となります。

会社によっては、会社分割や事業譲渡などの手法を利用して第二会社方式等による事業再生を考えられるケースもありますが、その際は、事業再生の実務に精通した弁護士さんと連携して取り組むことをお勧めします。

■本記事は、無料メールマガジン『起業家・経営者のための「使える情報」マガジン』から記事を一部抜粋したものです。
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